先日、京都にある旧三井家下賀茂別邸の特別公開に行ってきました。

この建物は新築でこの場所に建ったものではなく、
別のところに建っていたものを移築したものです。
移築はフルリノベーションに繋がるイメージがありますね。
実際には移築ってとても難しいです。
というのも、機械で柱や梁を加工するプレカットの建物なら
ボルト類を緩めれば比較的簡単にバラすことができますが、
この時代は手刻み
そして金物類もなかった時代です。
釘も使いますが、あくまでも木組みで強固に組みあがっているのですが、
こんな感じの複雑な組み方をしますので
いちど組んでしまえば逆に外すことが非常に困難になります。
組んだ後に中央に見えている栓を打ち込んで固定するので絶対に外れません。
これをノミなどで栓を取り除いて柱と梁を外していく必要があります。

二つとも同じ加工部ですが、奥が手刻み、手前がプレカット
複雑さが段違いです。

建物内には随所にこだわりが
襖の取手
形もさることながら模様細工もしてあります。

室内はとても洗練された上品さ
庭を一望できるようになっています。

瓦には三井の紋が。

四層になっている一番上の展望部屋には雨戸の納まりにカラクリが。

普通、雨戸は横にひきますよね?
全面窓にするために展望部屋の雨戸は窓の下から出るようになっています。

説明員の方が写っているので半分の姿になりますが
こんな感じで下から引き出した雨戸を閉めるようになっています。
しかも二枚に分かれていて、上の段は縦枠に引っかかるように工夫されていました。

建築は日々進化します。
しかし、ルーツをたどれば昔ながらのことをリファインしたものが多いです。
昔はたとえばアルミサッシやサイディング、断熱材などは当然にありません。
そんな中でいかに工夫するか
それが建物を建てる時の中心人物である棟梁の采配にかかっています。
それは今でも同じ
棟梁の考え方、持っている技術力とその引き出しの多さの差が
現場の納まりの差に繋がります。
とくに今あるモノ・コトに合わせる必要があるリノベーションの場合には特に。
久しぶりに自分の感性とはまた違った建物に触れて良い刺激をもらいました!