万博に行ってきました。
建築に携わる者として大屋根リングが見たかったのです。

大屋根リングは外径で670メートル
全長2キロ
高さは一番高いところで20メートル
第一感想は「ほおぉ〜!」
建築には認められている施工誤差が何事においてもあります。
これだけ大きな建築物ともなれば
少しの誤差が積もり積もって大きな差になり、
どこかで調整しなければならず
帳尻合わせポイントがどこかに見えます。
そこの納め方が腕の見せどころでもあるので見たかったんです。
まず柱
もし柱が足元でたった1ミリ倒れていたら?
たった1ミリでも20メートル上部では2センチも倒れます。
梁が柱を貫通していますし、
また、全長2キロの長さのあいだ、
何百本?いや、何百本では済まない数であろう柱と梁を連結していくわけですが
私が見た限り帳尻合わせポイントはまったくと言っていいほどなかったです。
使っている木材は集成材なので反りやねじれは少ないですが、
それでもゼロではありません。
製材して、現地で組み立てている間にも
歪みはどんどん出てきます。
つまり、「今」施工した部分と
「1ヶ月後」に施工した部分ではすでに誤差の違いが絶対にありますので
同じ施工手順を繰り返せばいいというものではありません。
さらに言うと施工時はピッタリでも自重による垂れや、
木材のねじれなどのせいで1ヶ月後には誤差が必ず発生しています。
それでもなお、精度が出ているってすごいことだと思います。

梁の貫通開口のクリアランス(余裕)は1センチ程度
つまり、柱のコケ、そして木材のねじれの3次元の誤差を
たった1センチのクリアランス内で成立させる精度
それを全長2キロ、しかも円形のすべての箇所で成立させるって
ホントすごいことなんですよ。
そして、古来の木造建築物と同じく楔による固定
もしも地震が来たら揺れるわけですが、
揺れたらその時は楔が効きます。
また、この先、木材に歪みが出てきた時に
楔を締め込んでいくこともできそうです。
それからこれ

梁の接合部はドラフトピンで留まっています。
これは木材の中心に金属プレートが入っていて、
ピンが貫通して接続できるのですが、、、
このピンの位置、穴の大きさにポイントがあります。
簡単に穴を開けてピンを差し込むだけと
一般の方は思うかもしれませんが、、、
このピンと、ピンの穴、私の経験上で言えば
ピンの直径に対して穴の大きさがもし5ミリ大きかったとしたら
ガバガバでピンが留まりません。
逆に穴に対してピンがキツめだと理論上は施工可能でも
実際の現場では難しい。
さらに、併せて、、、
穴の位置がもしも真っ直ぐではなく、
斜めに5ミリズレていたらもうピンは入りません。
もちろんプレカット工場で正確に穴を開けるわけですが、
ピンだけの問題じゃなく、
先ほど書いたように柱や梁の施工精度がもし悪かったら
このドリフトピンの穴も合わなくなります。
それを1スパンだけじゃなく、全長2キロ
しかも直線でなく円形ですからとんでもない精度が必要になります。
図面上、形を作るのは簡単なんです(もちろん簡単ではないですが)
パソコン上でいくらでも修正できますし、
図面上では日が経つにつれて木が歪むなんてこともありません。
でも実際の現場はそうはいかない。
それを具現化できたこと自体が日本の技術力の証だと思います。
もちろん厳密には全体で数十センチから数メートルの誤差はあるかもしれませんし、
現場での追加加工もたくさんあったでしょう。
ですが想像してください
コンパスを使って直径3メートルの円を書けと言われて
ピタッと始点と終点を合わせられますか?
直径3メートルにもなればたぶんズレるでしょう。
直径670メートルの円を立体的に組み上げる
このすごさ
てっきり
「あ〜、ここで帳尻とったのね。この大きさだもん、そりゃそうだろう」
ってところがはっきり見えると思ってたんですが、
私が見た範囲ではそれはなく、クリアランス内で処理できてた。
誰が設計したかとか、デザインがどうということは関係なく
これだけの大きさの木造建築物、しかも円形を完工できたこと
そこにただただ感心し、日本の技術力に脱帽した1日でした。
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中は立ち止まることなく進むので20分ほどで入れました。
そして中は、、、
行ってみてのお楽しみです!